社ちょログ

ベンチャー企業の社長が経験則から備忘録も兼ねて経営に役立つことを発信します。

ベンチャー企業でアルバイトを雇用する時の注意事項

ベンチャー企業の方々でアルバイトを中心に雇用して、事業運営を行っていこうと考えている方々のために、私の経験から得られた

「ベンチャー企業がアルバイトを多く雇用する際の注意点・チェックリスト」を公開しようと思う。

ベンチャー企業である当社でもアルバイトを雇用しているが、特に留意することを書き留めておく。

 

ベンチャーがアルバイトを雇用する際の注意点は4つ

創業時、資金があまりないベンチャー企業がアルバイトを雇用することは様々なリスクがある。

そのことは、実際にアルバイトを雇用した後にしか気付かないことも多い。

 

ベンチャー企業でアルバイト雇用の注意点①:時給で雇用する意味を理解

アルバイトの給与は基本的には「時給」だ。

人を増やそうと思ったということは、受託でも自社サービスでも何かしらリソースが必要になった(=仕事ができた)ということだ。

その新たに発生した仕事が、果たして「時給」で雇用するアルバイトに担当してもらうことで、事業的・利益ペースでコスパがいいのかを考える必要がある。

 

ベンチャー企業で(特にIT企業)多く使われている雇用形態は「業務委託契約(いわゆる外注)」だ。

業務委託契約では、時給ではなく「こなしてもらった仕事に対する報酬」を支払うため、成果が伴うある一定の仕事をこなして「検品完了」となった際に初めて「あらかじめ決めた金額」を支払う。

 

業務委託のメリットは「ある業務にかかるコストを明確に固定できる」ということ。

一方アルバイトの場合は、その人が業務をこなすスピードによって大きくコスパが異なる。

 

例えばAという仕事があるとして、業務委託契約を結んだ人に1万円でその業務をお願いするとしよう。

極端に言えば、その人がその業務を行うのにどれだけ時間がかかったか、は全く関係なく、とにかくその業務には1万円のコストしか発生しない。

 

一方、時給1000円のアルバイトを雇用して同じ業務をお願いしたとしよう。

そのアルバイトが非常に優秀で業務スピードが速く、その業務が5時間で終わったとする。

そうすれば、発生するコストは1000円×5時間=5000円、だ。

 

業務委託契約で1万円で業務をお願いした場合よりも安く済む(=コスパが良い)。

 

このように、ある業務をアルバイトを雇用して行うのか、業務委託契約で任せる人を探すのか、はコスパを中心に考えることになる。

 

ここまで、「アルバイトの方が良い」的な雰囲気で説明してきたが、これはあくまで「事業的な判断」の面のみを抽出したものだ。

実はコスパ以外にも考えるべき要素は多く、むしろそっちの方が経営的には重要になってくる。(経営的判断)

 

ベンチャー企業でアルバイト雇用の注意点②:時給以外にかかる費用

ベンチャー企業にとってアルバイトは時給だけで見るとコスパが良い場合(アルバイト個人の能力による)も多いが、そのほかに考慮しなければならない費用もある。

 

  • 社会保険料
  • 雇用保険料・労災保険料
  • 交通費
  • 家賃
  • 備品代

 

上記の費用はアルバイトを雇用する際に発生しうる費用だ。

 

社会保険料は、週30時間以上(正規雇用者の3/4以上)働く従業員は全員加入する義務がある。

また、社会保険料は総額を会社と本人で折半して費用を負担する。(労使折半)

具体的な費用は都道府県によって異なるが、月20万円程の給与額であれば社会保険料は約5〜6万円(会社負担は2.5〜3万円程度)である。

 

雇用保険料は、週20時間以上働く従業員は全員加入する必要がある。

これも労使折半であり、労災保険料は会社が全額負担だ。年に一度まとめて納めるのだが、金額は給与の0.数パーセントであるため、そこまで影響は多くない。

 

交通費は、その名の通りアルバイトがオフィスまで出勤する際の移動費用だ。

基本的には会社が負担することが多いが、実は会社が必ず払うという決まりはない。

これは当然アルバイトが住んでいる地域によって大きく異なるが、人数分かかってくる。

 

家賃に関しては、人数が多ければそれに合わせたスペースを用意する必要があり、広い分だけ基本的には高くなる。

 

備品代は、アルバイトに仕事をしてもらうために必要な道具(PCなど)を購入する費用だ。

PCを買えばセキュリティソフト代もかかるし、従業員のモチベーションのために飲み物なども用意するかもしれない。

特に創業したばかりで備品を一から揃えなければならないベンチャー企業は大変だろう。

 

当たり前だが、社会保険や雇用保険は大企業だろうがベンチャー企業だろうが関係なく加入が必須なのだ。

 

ベンチャー企業でアルバイト雇用の注意点③:有給を考慮する

一定期間、一定日数を出勤した従業員には、たとえベンチャー企業でも有給休暇を取得する権利が発生する。

個人によってその日数は様々だが、基本的にはアルバイトにも発生するのだ。

もちろん、よりよい労働環境の提供のために有給取得は大いに歓迎すべきだが、有給取得の時期が重なったりスタートしたばかりのベンチャー企業だったりする場合には、タイミングも重要な要素になるだろう。

 

ベンチャー企業でアルバイト雇用の注意点④:人的トラブル

アルバイト契約と業務委託契約では、契約形態だけでなく実態としても大きな違いがある。

簡単に言うと、アルバイトは会社で「雇用」(所属)している従業員であり、業務委託契約は「社外の人物」であり従業員ではない。いわゆる労使関係ではないため、労使紛争のようなものは発生しない。(契約書上のトラブルはもちろん発生しうる)

 

アルバイトは実際にオフィスに出勤するため、業務委託契約の人よりも人的トラブルの発生可能性が上がるのだ。

人的トラブルとは、いわゆるセクハラ・パワハラはもちろん、オフィス環境についての要望や、労働者同士の恋愛など、多岐にわたる。

そのような人的トラブルが発生した場合には、ベンチャー企業の場合は経営者レベルまで問題が上がってくることが多く、そのことに時間を割く必要性が少なからず出てくることを頭に入れておこう。

 

ただし、アルバイトを雇用することで発生するのは悪い意味の人的トラブルだけではもちろんない。

 

目に見えて仕事仲間が増えるのは嬉しいことだし、会社に活気もでる。

特にベンチャー企業では、良いビジネスアイディアがアルバイトとの交流から生まれることもザラだ。

 

ベンチャー企業でアルバイトを雇用する際には、両面にフォーカスする必要がある。

 

ベンチャー企業でアルバイトを雇用することを考える

さて、ベンチャー企業がアルバイトを雇用する際に留意するポイントを説明したが、勘違いしてほしくないのは決して「アルバイトを雇用する=リスク=おすすめできない」、という訳ではない。

あくまで、アルバイトを雇用して行おうとしているビジネスモデルや性質をしっかりと考慮した上で判断すべきであり、メリットにも焦点を当てるべきだ。