社ちょログ

ベンチャー企業の社長が経験則から備忘録も兼ねて経営に役立つことを発信します。

商売の4原則を身をもって経験している話

商売の4原則という言葉を聞いたことがあるだろうか。

何か事業をスタートさせる際に意識すると、その事業の成功可能性が上がる原則だ。

今回は僕が経験した商売の4原則の正しさをご紹介したいと思う。

 

1.商売の4原則とは

  1. 在庫を持たない(もしくは最小限)
  2. 少資本で始められる
  3. 利益率が高い
  4. 毎月定額収入がある

 

商売の4原則①︰在庫を持たない(もしくは最小限)

「在庫」という概念は、主に目に見える「物」を販売する際に現れるものだ。

たとえば、ECサイトを自分で運営しようと思ったら、いつ入るか分からない注文に備えて販売する商品をどこかに一定量保管しなくてはならない。

巨大ECサイトAmazonは世界中にありとあらゆる商品を保管する倉庫を持っている。

飲食店や青果店なども当てはまり、とにかく目に見える物を販売する商売では「在庫」という概念がつきまとう。

この在庫だか、ただ置いておくだけでもそれなりのコストがかかる。

ざっと考えられるだけでも、

  • 在庫を保管する場所の家賃
  • 在庫を管理する人件費「管理費」
  • 商品の仕入れ値

 

このように、商売を開始もしくは維持するだけでも相当のコストがかかる。

商売の4原則の2つ目にも関わることだが、在庫を抱える商売は初期費用も高くなる傾向にあり、少額資本でスタートがしにくいことにも繋がるのだ。

上記の理由から、在庫を抱えない商売にすべき、ということが言える。

 

商売の4原則②︰少額資本でスタートできる

少額資本でスタートできる方が事業が成功するにしろ失敗するにしろ、有利なのは言わずもがなだ。

事業のローンチまでに大きなコストがかかる商売は、スタートしづらいし、失敗した時のダメージが大きいのだ。(ついでに言うと、設備などが増えることからランニングコストも増える傾向にある)

 

商売の4原則③︰利益率が高い

利益率とは、売上に対する営業利益の割合のことだ。

業界によって目安となる利益率はあるようだが、この利益率は高いに越したことはない。

飲食店や物販の商売なら仕入れ値が低ければ低いほど利益率は上がるし、どの商売においても人件費が安い方が利益率が上がる。

ただし、利益率が高いことばかりを追い求めすぎるのは危険な考えだ。

これについては、考察の章で説明する。

 

商売の4原則④︰毎月定額収入がある

これはいわば「安定の基盤」である。

人件費等を含めたランニングコストを上回る安定した定額収入が毎月あれば、事業が途中で頓挫する可能性は大きく下がる。

これは業種によって大きく異なるが、商売のスタート段階で毎月の定額収入があることはほとんど不可能だ。

そのため、この「毎月の定額収入」はそのビジネスの収益モデルが目指していく理想の形、ということになる。

月額や年額の課金型のサービス(所謂サブスクリプションモデル)などがこれにあたり、その安定した収益を原資としてどんどん拡大しているのだ。

 

2.ライティング業務やプログラミング業務

僕の会社でも行っている事業であるライティング事業について紹介しようと思う。

僕がこの事業を開始した時には、一切商売の4原則のことなんか頭になかった。

ちょっとライターという職業をかじったことがあったので、始めてみたにすぎない。

でも、いま振り返ると結構この商売の4原則を満たしているなーと感じる。

 

ライティング事業とは、

ライターを自社に大量に抱え、クライアントであるオウンドメディアさんや大手代理店さんから依頼を受けて記事を執筆・納品するビジネスモデルだ。

ライターは業務委託契約で抱えるため、基本的にはある業務をお願いして、それに対する報酬を支払う。

逆に言えば、仕事が発生しなければこちらが支払うコストはゼロに抑えられる。

逆にクライアントから依頼を受けたあと、理想の利益率になるようにライターに支払う報酬額を決定することができる。(商売の4原則︰③利益率が高い)

 

また、スタートさせるにあたってかかるコストは無いに等しい。

PCがあれば様々な媒体を使ってライターを募集できる(無料の求人広告媒体もあります)し、クライアントを見つけるための営業だってメールでできる。(商売の4原則②︰少額資本でスタートできる)

 

商品である「記事」は目に見える物ではあるが、保管するのに場所は必要ない。

必要なのはPCのストレージだけだし、ストレージだって無料のクラウドサービスを使えば無料だ。(商売の4原則①︰在庫を持たない)

 

上記の状況下だったため、コストのことで頭を悩ませる時間が絶対的に少ない。

だからこそ、クライアントに提供する記事のクオリティーアップに全身全霊で取り組める。

その結果、クライアントからの信頼度の上がり、継続的に依頼してもらえるようになった。(商売の4原則④︰毎月定額収入がある)

 

このように図らずも商売の4原則を満たしていた結果、ぬくぬくと数年間割と不自由なく事業を継続できている。

 

3.商売の4原則は全て満たす必要があるのか

さて、これまで紹介してきた商売の4原則だが、必ずしも全て満たさないと事業は上手くいかないのだろうか。

人によって考えはそれぞれだろうが、少なくとも僕は違うと思う。

詳しくは次の章で話すが、世の中で成功している商売を見ると決してそんなことはないことが分かるはずだ。

 

4.商売の4原則に関する考察

僕が商売の4原則に対して持っている考察は以下の2つだ。

 

1.利益率絶対主義はやや危険

商売の4原則③「利益率が高い」というのは、とても大切なことであるが、これだけをとことん追求してしまうのは危険だと思う。

商売の始めたてはとにかくキャッシュが枯渇しているので、少しでもコストを削ろうと考える。

その対象になりやすいのが「人件費」ならびに「下請けコスト」だ。

先のライティング事業の例だと、ライターに支払う報酬を下げることだ。

これで一時的に利益率は上がるかもしれないが、質の高いライターは離れてしまい、結果的にクライアントに良い記事が納品できない。

そして継続的な依頼は見込めない。

いきなり利益率の大幅アップを念頭に置いてしまうと、中長期的に見ると事業の持続性が損なわる危険性がある。

自分もライターもクライアントも、その事業に関わるすべての人がハッピーになるのが一番だ。

 

2.低リスクで独立したい人向けの原則である

この商売の4原則だが、いわゆるスモールスタート、スモールビジネスを考える際に有益だ。

しかし、一方で世の中で大流行しているサービスや事業は、IT系から飲食系まで最初に大きなリスクをとっているケースが多い。

飲食店は最初に初期費用がかかる代表的な例だが、世の中のチェーン店はこの4原則に反している「初期費用が大きくかかる」という壁を乗り越えてきたのだ。

NETFLIXなどの映像系サブスクリプションモデルも、最初に莫大な費用がかかる。

でも、人々の生活に大きな影響を与えたり、世の中で話題になるサービスは、最初に莫大なリスクをとっている。

事業を始めてから安定して収入が得られるまでの期間、いわゆるデスバレー期間が長い。

そのデスバレーを乗り越えたからこそ、本当に大きなサービスになるのだな。

 

商売の4原則を満たした事業を始めよう

とはいえ、全員が全員ものすごく大きなサービスをやりたい訳ではないと思うし、個人レベルで会社を辞めて独立したい、という人も多いはずだ。

そのような人は、事業を始める際には商売の4原則を意識すると成功確率は上がるだろう。